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しかし誰にでも合うような万能性を目指したアプローチが、常に最高のパフォーマンスを実現するとは限りません。それはなぜでしょうか。なぜなら私たちの耳にはそれぞれ個性があり、こうした差異は音の聞こえ方やノイズキャンセレーションの効果に違いを生み出すからです。
航空宇宙エンジニアでありボーズのシニアシステムエンジニアであるJohn Rule博士は次のように述べています。「私たちの外耳道はみな一人ひとり異なり、音響的に異なる性質や反応を見せます。私たちは誰の耳にでも合うヘッドホンを設計することで、パフォーマンスを制限してしまっていたのです。」
Rule博士には考えがありました。サウンドとノイズキャンセレーションをそれぞれの耳に合わせてカスタマイズすることで、ヘッドホンとイヤホンのパフォーマンスを向上することができないだろうか。そう考えた彼は、パーソナライズのアイデアを上司に相談し、その課題に取り組む時間と空間を希望しました。
6ヶ月後、彼はパーソナライズノイズキャンセリングの構想を実現させ、他のエンジニアは彼の核となるアイデアを用いて、パーソナライズされたサウンドを提供する方法を解明しました。そして、これらのイノベーションが一つとなって誕生したのが、CustomTuneサウンドキャリブレーション技術です。この技術はボーズのノイズキャンセリングイヤホンであるBose QuietComfort Earbuds IIに初めて搭載されました。
QuietComfort Earbuds IIを耳に装着すると、スウォンプサウンド効果を生み出すチャイム音が鳴ります。このチャイム音は外耳道を通ってから反響し、イヤホンに搭載されたマイクがその反響音を拾います。これこそ、CustomTuneが魔法のように機能する仕組みです。
Rule博士とボーズのエンジニアは、CustomTuneが雑音をブロックする機能を測定した時、その能力に驚くこととなりました。なぜならQuietComfort Earbuds IIは、市場内の他のあらゆるノイズキャンセリングイヤホンやオーバーイヤーヘッドホンよりも周囲の雑音を打ち消すことができることが明らかとなったためです。
「この発見がなぜ大きな意味を持つのか、その仕組みを説明しましょう。」 Rule博士は次のように述べています。「強力なノイズキャンセリングがないと、音量を上げる以外に雑音を取り除く方法はなく、心地よいリスニング体験からは遠ざかってしまいます。しかしQuietComfort Earbuds IIは、周囲の雑音をほぼすべて取り除くことができるため、静かで心地よい環境で音楽を再生することができるのです。」
パーソナライズされたオーディオ効果が音楽のサウンドに影響を与える仕組み 大半のアーティストは、サウンドスタジオ内の洗練されたオーディオシステムを使用して楽曲を作成しています。音楽がヘッドホンやイヤホンを通して再生される時、音楽は外耳道の構造によってオリジナルの録音サウンドとは異なったものとなります。一部の周波数は増幅される一方で、その他は抑えられてしまうのです。
CustomTuneの発見を振り返り、新しいアイデアとは突然どこからともなく生まれるものではないとRule博士は指摘しています。イノベーションとは、個人またはチームがそれぞれの専門性を一つの分野に適応し、他の分野内の問題を解決する時に生まれるものです。ロケット科学者であるRule博士が、パーソナライズされたオーディオを開発したように。
Rule博士は次のように語っています。「私は、音響から燃料電池、防衛技術、高出力レーザーに至るまで、さまざまな研究分野に携わってきました。音響的課題に私の専門分野の一つである航空宇宙学から数学的手法を用いた時、ユーレスカでのCustomTuneの成功が実現されたのです。」
ボーズには発見を促進する力があるのでしょうか? 成功が約束されていないにも関わらず、数か月間にわたるプロジェクトへの取り組みを実現してくれたのは、ボーズが持つイノベーションの文化であるとRule博士は述べています。